FC2ブログ

時計草の館

ゲームシナリオライターが右往左往しております。 ただいま造形日記に絶賛シフト中。何のブログなのか本人にもやや不明。

The Long Afternoon of Warriors

某所で書いていた血界戦線の二次創作。

男臭い! 女の子出てこない! 主人公が名無し!

ものすごくやりたい放題書いていますが、たのしけりゃいいんですよ。私が。

 ヘルサレムズポリス、第26分隊。
 三ヶ月前からオレはここに所属している。
 ちなみに第1から第17は存在しない。
 ほとんどが殲滅。
 もしくは潰滅し、新しい部隊に組み込まれた。

 なぁ、全滅より上があるって知ってたか?
 オレは知らなかった。
 つまりなにが言いたいのかっつーと、そのくらいのド素人がこうして部隊に配属されているってことだ。
 26部隊は新人の寄せ集めだから、他の奴らも似たようなもんだ。
 何人かヒトケタ部隊の生き残りのべテランが居て、俺たちはソイツらの見よう見まねでなんとかやっている。

「なんでこんな部隊に入っちまったかなぁ」
 オレはフィルターぎりぎりまで吸ったタバコを携帯灰皿にねじ込む。
「そりゃぁこの美しくすばらしい世界を守るためだろ」
 背中からからかうような声が聞こえる。
 同期のアーウィンだ。
 同期で年も近いとなりゃ、自然とつるむようになる。
「なに言ってるんだよ」
 まぁ、ヘルサレムズポリスに配属されると聞いたときには、そんな思いも多少あった。
 人類の要の土地。
 ここを守ると言うことに、多少の高揚は覚えた。
 オレもヒーローになれるんじゃねぇかって、ガキくさいことを考えたもんだ。
 だけど、ここにきてやることと言えば、交通整理だ警護だで、にチンピラどものケンカを止めることが仕事の花形だ。
 ゴツイスーツに最初は興奮したが、今じゃただの作業着だ。

 ビィィ――――!

 今日も呼び出しのベルが鳴り響く。
「いつもいつも騒がしいな」
「いい給料もらってんだ。辛抱しろよ」
 アーウィンがガムをクチヤクチャしながら言う。
 こいつはいつもガムを噛んでいる。
 それはいいが音が聞こえるように噛むのだけは勘弁してほしい。
 何度指摘してもなおりゃしねぇ。
 俺たちは連れだって倉庫に向かう。


 ダンゴムシたちがずらりと並んで充電されている。
 ダンゴムシってのは、俺たちの着るスーツの名前だ。
 なんか格好よさげな名前もついてるが、オレたちは皆ダンゴムシって呼んでる。
 コレを着たらダンゴムシにしか見えないからな。
 こんなの着ずに、颯爽と戦えたらヒーローらしいんだろうが、背に腹はかえられない。
 ケガをするのは痛いからな。
 不格好なスーツに体をねじ込む。
 中はしっとりして暖かい。
 女のアレみたいだって口の悪い奴らは言うが……まぁ、その通りだな。
 濡れているのは神経との接触をよくするため、暖かいのは充電でおきた発熱だって言われているが、これ自体が生きているって噂もある。
 36時間以上着ていたら癒着して脱げなくなるなんて話もあったな。
 本当か嘘か知らないが。
 どっちにしろ満タンに充電しても16時間分しかうごかねぇんだから確かめようもない。
 確かめる気もねぇ。
 こんなヌルついているのは最新型だけだ。
 一年前まで使われていたタイプはドライなやつだ。
 ドライな方は乗りこなすのに長い訓練が要るが、こっちはチュートリアルさえ受ければ誰でも動かせる優れ物。
 ヒトケタに言わせりゃバランサーが反応よすぎて使いにくいらしいが、知るか。
 勝手にドライなのに乗ってろよ。
 俺たちに押し付けんな。
 ダンゴムシを装着した俺たちはトラックに詰め込まれ、現場に運ばれる。
 アーウィンの野郎はまだガムをクチャクチャやってやがる。
 さすがにタバコは禁止だから口寂しく、このときだけはヤツがうらやましい。
「何やるんだ今回は? 連絡ねぇじゃん」
 クチャクチャとアーウィンが言う。
「どうせケンカの仲裁かなんかだろ。アイツラ自分のでかさわかってねぇんだよ」
 オレたちに回される仕事なんてそんなもんだ。
「いや違うな」
 ヒトケタがボソリと言う。
「はぁ?」
「気を引き締めろ。連絡がないってことは、それだけ混乱してるってことだ」
「俺たちんとこまでそんなんが来るかよ」
 鼻で笑ってやると、ヒトケタドライ野郎は小さく息をついてうつむく。
 辛気くさい野郎だ。
 ゴゴ……トラックが揺れる。
 どこを走ってるんだ?
 気になるがトラックに窓はない。
 いざって時のバリケードを脆くする理由はないからな。
 ガクンとトラックが止まり、扉が空く。
 薄暗かった荷台に、西日が差し込み目が眩む。
 赤かった。
 夕日が瓦礫を真っ赤に染めていた。
 一面の紅。
 元は街だったはずだ。
 ヘルサレムズ・ロットにこんなに開けた土地が遊んでいるわけがない。
 まだ若干形の残った建物。
 夕日を受けてなお赤くぬらぬらと光る、こびりついた血の跡。
 どこまでも瓦礫なら、ああ、ここはそういうところだ。と、納得もできた。
 だが、赤い霧の向こうに蜃気楼のように揺れるビルが、ここが俺たちのよく知るヘルサレムズ・ロットだと教えてくる。



「戦況は?」
 呆然としているオレたちを無視して、ヒトケタが先に到着していたドライなヤツに訪ねる。
「21は全滅だ」
「敵は?」
「わからん」
「いつものか」
「ああ。俺たちにはとても手に終えないやつだ」
「悪運もここまでか?」
「かもな。なんでとっと逃げなかった?けっこう退職金でるだろ」
「お前と同じ理由だ」
「そうかよ」
 ヒトケタ同士の意味のわからない会話。
 なんなんだよ。
 わかるように話せよ。
 オレたちはどうすりゃいいんだよ?
「おい、おまえら」
 ヒトケタが俺たちの方を振り向く。
「指揮系統はとっくに死んでる。死んでなくてもどうせ役には立たない。俺たちが今から対峙するのはそう言う敵だ」
「は? どういうことだよ。指揮系統が死んでちゃ、俺たちは何をすればいいのかさえわからねぇぞ?」
「分かってるだろ」
 ドライなヤツが笑う。
「戦うんだよ。ヘルサレムズ・ロットを一瞬で瓦礫に変えられるヤツとな。何度もヘルサレムズ・ポリスを潰してきたやつら。血界の眷属とな」
 血界の眷属。
 その言葉に背筋が冷える。
「そんなの、存在するわけねぇ」
 口の中が乾いていた。
「信じてないフリは止めろ。時間の無駄だ」
 ヒトケタは自分の獲物を取り出し肩に担ぐ。
「まぁ、この中に本当に信じてないヤツが居るなら、その認識を捨てろ。奴らは存在する。そして退屈しのぎ程度の気持ちでこっちに手を出してくる。俺たちは何度かそいつらとやり合った」
「やり合って、あんたらが生きてるってことは倒したんだな。だったら問題ない。こっちの装備は日々進化してるんだ」
「はっ!」
 ヒトケタの顔がゆがむ。
 ヤツのそんな顔を見るのは初めてだ。
 いつもの取り澄ました無表情はどこに行った?
 それじゃあまるで場末のチンピラ……オレたちみたいな顔じゃねぇか。
「おめでてーな。××××野郎どもが。俺たちは勝ったんじゃねぇよ。たまたま生き残ったんだよ。象が蟻を踏み殺した時、一匹二匹まだ動いてるのを気にするか? そんな蟻なんだよ。俺たちは。ダンゴムシほどもでかくねぇ蟻なんだよ」
「武器を取れ、すぐ来るぞ」
 ドライ野郎が顎をしゃくる。
「先に言う。生きて帰れると思うな。死ぬ準備をしろ、豚ども!」
「待てよ! 勝てる相手じゃないんだろ!? そんなのと戦ってられるかよ! オレたちはジャパンのサラリーマンじゃねえ。仕事に命かけられるかよ!」
「だよなぁ」
 にぃ。とヒトケタが笑い、次の瞬間にはオレは地面に転がっていた。
 ダンゴムシがオレの意志とは無関係に立ち上がった所を、もう一度殴られ転がった。
「おい、お前ら作りモンの×××にはまって×××硬くしてるしか脳がねぇの××野郎なのかか? お前らは違うだろ!? 俺たちはヘルサレムズ・ポリスだ。そのダンゴムシに入った瞬間からな!」
「逃げたいなら逃げろ。逃げたヤツは俺たちが殺してやる」
 本気だ。
 なんなんだこいつら、狂っているのか?
「この世界に神が居るなら、俺たちはその刃だ。人界を守る壁だ。食い止めるぞ!」

 待てよ、待てよ!
 なんだよそれ!? 俺たちが殺すってなんだそれ!?
「おまえらにだって。守りたいものがあるんだろ? だからここに居るんだろ? もっと楽でいい仕事はいくらでもある。それでもお前たちはここにいる」
 クサイ台詞。反吐が出そうだ。
「往くぞ」
「逝くぞ!」
 ドライとヒトケタが走り出す。
 逃げるなら、今か? そう考えるより前に足が動きダンゴムシが奴らの後を追い始める。
 さすがに、今は逃げられない。
 軽く攻撃を受けてから、戦闘不能のフリをするのが賢いだろ。

 だが、第一波をうけたとたんに、そんなのは甘い考えだと思い知らされた。
 なんなんだあれ、おかしいだろ!? こっちは最新鋭のダンゴムシをまとっているんだ。
 それをまるでスチロールのハリボテでも砕くように食い破っていく。
 戦闘不能のフリをする?
 無理だ。
 奴らは倒れてもう動けない奴らに取り付き……喰っている。
 ロブスターでも食べるように装甲をはぎ、肉を喰み、血をすする。
「冗談じゃねぇよ」
 アーウィンが震える声でつぶやく。
 もうガムは噛んでない。
 全く、冗談じゃねぇよな。
 あんなのとやり合うなんて。
「あんなの、外には出せねぇよ。どーすんだよ。ヘルサレムズ・ロットの外にあんなのが一匹でも出たら」
 そうだな。
 小さな町なら半日で壊滅だ。
 スティーブン・キングの小説みたいに、じっくりと恐怖に浸る時間もいらない。
 平和ボケした外の奴らなら、気がついたときには死んでいるだろう。
 はじめっからフルスロットルの下品きわまりないR指定のパニックムービー。
 ストーリーなんざ存在しない。
「冗談じゃねぇよ。絶対外には出せねぇよ!」
 そういや、アーウィンにはガキが居た。
 うっかり孕ませた。しくじったとか言っているが、財布の中に女房とガキの写真を入れてるのはみんな知っている。
「おい。冷静になれ!」
「冷静? 言ってられるか! 止めるぞ!」
 アーウィンが走り出す。
 たっく、何なんだよ!? そんなのはコミックの中だけにしておいてくれよ。



 10分もたった頃には、こっちの人数は半分以下になっていた。
 まだドライとヒトケタ。
 アーウィンは残っている。
 向こうの勢いは衰えない。
 だが、少しづつ押している。
 行けるかもしれない……
 ここは、またそれほど被害を受けていない。
 瓦礫の山にはかわらないが、まだ建物の原型を残している。
 それだけに、ほんの少し前までは人々の暮らしがあったことを未だ匂わせ、オレをたまらなくする。
 足下にころがるぬいぐるみ。
 きれいなのがいやだ。
 爪先で蹴り横によける。踏みつぶさないように。
 ころころと転がるぬいぐるみを目で追い、倒れた冷蔵庫の陰に動くものを見つけた。
 すぐさま銃口を向ける。
 引き金を引く前にそれが顔を出したのは幸運だった。
 それは敵じゃなくて、ガキだった。
 人間じゃなくて、クリーチャーのだったけどな。
 それでも生きてた。
 涙なんだか分泌物なんだか分からないものをぐちゃぐちゃとにじみ出させながら、触手で顔らしき所を必死にぬぐっている。
 そばには親らしいクリーチャーが、すでに肉の塊になって転がっていた。
 よく生きていたもんだ。
 クリーチャーでなきゃもっとよかったんだけどな。
「速く逃げろ。向こうの敵はかたずけた」
「でも、かーちゃんが」
「心配すんな! もう死んでる!」
 びくりとクリーチャーの子供が震え、鳴き声を上げる。
 コレだからガキは嫌いだ。

 ギシェァ!
 引きつるような叫びと共に、第三波襲来。
 鼻っ柱に20ミリをぶち込んでやる。
 だいぶ削れたが、これで弾切れだ。
 オレはただの鉄の筒に成り下がったものを捨て、武器を持ち変える。
 たっく、何なんだよ。
 ヒトケタとドライのあの動きは。
 旧式のダンゴムシでどうしてあんだけ動けるんだ? 最新型よりよっぽどよく動く。
 ヒトケタとドライの活躍で、第三波もなんとかしのぐ。
 味方はまた少し削れた。
「うぇぇぇぇぇっ」
 静かになった戦場に、鳴き声が響く。
 なんだ、クリーチャーのガキ、まだ生きてたのか。
 振り向いて、心臓がはねた。
 そこに、アーウィンが倒れていた。
 食い破られながらも、敵にとどめを刺して……血みどろになりながら、まだ息をしている。
「アーウィン!!」
 オレはヤツに駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「たぶん、ダメだ……」
 言葉と共に、口から鮮やかな色をした血のあぶくがこぼれる。
「なにやってんだよお前!? 家族がいるんだろーが!? どーすんだよ!?」
「ふひひ……げほっ」
 笑って、血を吐く。
「いねーよ、家族なんて」
「ああん? ガキが居るだろ!? あの写真は何だよ!?」
「ああ、あれな。もういねぇの。……金なくて、一年遅れの新婚旅行で、三年前、ニューヨークに来たんだよ。あの日に。笑えるだろ。残ったの俺だけ。死体も見つかってねぇ」
「…………」
 どこが笑えるんだよ。その話の。
「だからな、家族なんていねぇの……いつ死んでもいいんだよ、おれ。ふひひ」
「もう話すな!」
「聞いてくれよ、最後なんだよ。やっと行けるんだよ。リンダとショーンの所へ。いい死に様だろ。子供かばってとか。とーちゃんはヒーローだって……言ってもらえっかな?」
「バカ抜かせよ。まだ生まれたばっかだろ。しゃべれねぇよ!」
「えふっ……あっちで成長してる。俺に似たいい男に……なって……」
「アーウィン! ア―――ウィン!?」
 それっきり、ヤツは動かなかった。
「バカだろ、お前。お前に似たらいい男になんかなるわけねぇよ」
 本当にバカな野郎だ。
 バケモノのガキをかばって死んだ。
 バカじゃねぇか? バカじゃねえか? バカじゃねえか? バカじゃねえか? バカじゃねえか? バカじゃねえか? 完全にバカだ。
 マジでやってられねぇ。
 さっさと敵さんぶち殺して、バーにでもしゃれ込みたい。
 浴びるほど飲んで、女を抱いて、何もかも忘れたい。
「進むぞ」
 ヒトケタの声。
「おう」
 自分の声がやけに遠い。
 往くか。往くしかねぇ。オレはヘルサレムズポリスだ。



 ―――そして、オレは学んだ。
 絶望ってのは、ずいぶんあっさりやってくるってことを。
 ああ、もうダメだな。
 本当にダメだ。
 オレたちが必死に相手をしていたあいつら。
 イナゴのように人間を食い荒らすあいつらは、単なる末端に過ぎなかった。
 つまりはザコだ。
 オレたちが必死で相手をしてきたのは、アーウィンを殺したのは、ザコだったんだよ。
 目の前にそいつらを無尽蔵に生み出し続ける親がいた。
 あっちの弾は無尽蔵。
 こっちはもう人数も武器もほとんどない。
 圧倒的すぎる戦力差だ。
 これは、さすがに無理じゃないか?
 ヘルサレムズ・ロットはこいつに突破されるだろう。
 三年も持ちこたえられたのは、ある意味奇跡だったんだ。
 こんなこと知りたくなかった。
 早々に死んでいれば知らなければよかった絶望を、おめおめと生き残ったせいでオレは味あわされている。
 だいたいなんでオレが生き残ってるんだよ。
 アーウィンも死んだ。部隊の奴らも九割死んだ。ヒトケタも死んだ。
 ドライなヤツは、先頭で戦ってボロボロになってはいるが、まだ生きている。
 オレたちは互いの動きをジャマしないギリギリでかたまり、まだ戦う姿勢を取っている。
 クソが。
 バカだろお前ら。
 勝てるかよあんなのに。
 あんなのと戦って勝てるのはピチピチのタイツを着たヒーローだろ。
 ガキの頃、バカみたいにあこがれたヒーロー。
 どんな逆境でも決してあきらめず、最後には必ず勝利を掴むヒーローたち。
 俺たちとは違う。
 違う。
 違うんだ。
「ふー」
 隣にいたヤツがため息を吐く。
 違う部隊のヤツで、名前も知らなねぇヤツだ。
「行くか」
 は? オメーなに言ってやがる。
 オレは目を剥いてソイツを見る。
 ウェットなダンゴムシと見えにくいところに張ってあるステッカーから、それほど古いヤツじゃないと推測できる。
 てか女の趣味いいな。もし生きて帰れたら、そのステッカー女の名前教えてくれよ。
 生きて帰れたら?
 自分の思考に驚く。
 普通に考えて生きて帰れるわけねぇだろ。
 こっちはぼろぞうきんで、あっちは無尽蔵の兵隊が居る。
「早いうちに片付けようぜ。休憩している間にあっちのタマが増えやがる」
「賛成だな。早く帰って皆で一杯引っかけたいんだ」
 明るい声が聞こえる。
 帰って皆で一杯か。悪くねぇな。
 冷えたビールが喉を落ちる感覚を思って、オレは舌で唇を湿す。

 ああ、まだオレは生きている。
 オレはぐいと獲物を握る。
 もう弾はないけれど、殴るにはちょうどいい。
 弾があっても無駄だけどな。
 引き金を引くためにあるダンゴムシの指はつぶれている。
 へしゃげた装甲の間から、オイルが血のようにしたたった。
 踏み出した足が、瓦礫を踏みしめ、飛び出す準備をする。
「一気に出るぞ」
 そんな声が、オレの喉から出る。
 なんだよそれ? やる気か? バカだろ?
 バカなのかオレは?
 ああ、バカだな。
 オレは昔からバカだし、バカと呼ばれて生きてきた。
 だったらなんの問題もねぇよ。
 バカはバカらしく、バカなことに命をかけるさ。
 ヒーロー気取りでへらへらわらって、こんな絶望の中で勝利を信じて突っ込んでいくさ。
 この世界を守るため、クリーチャーどもに正義の鉄槌を下してやる!
 オレたちは雄叫びを上げて突っ込んでいく。

 合衆国を……
 いや、人類をなめんじゃねえ!





 オレたちは計ったように一斉に飛び出した。
 なりふりなんてかまっちゃいられねぇ。
 一気に叩くしか道はない。
 タマを生み出し続ける親。
 アイツを叩け!
「オォォォォオオォッ!!」
 獣のごとき咆吼を上げて、俺たちはそれぞれの牙を剥く。
 同士討ちなど知ったことか、ありったけのタマをはき出し、全力で武器をふるう。
 ここで死んでもかまわない。
 そんなことを生まれて初めて思う。
 人類のために。
 カミサマよ、いるなら力を貸してくれ!
 オレはオマエの刃になる。
 人界を守る盾として、ここでアイツを食い止める!
「ラ、アッアアァァァッ!」
 喉から意味不明の声だけがほとばしる。
 もはや鉄くずと化した獲物をヤツにぶつける。
 渾身の力で、パワー調節のためのバランサーを切って、腕がもげるもの覚悟で。
 べしゃぁ!
 ヤツの体液がほとばしる。
 やったか!?
「ルアァァァァッ!!」
 ドライ野郎のナイフが突き刺さる。
 ヤツの体を真っ二つに切り裂き、ついでのオレ着るダンゴムシの表面まで切り取って。
 アブねぇな!
 別にかまわないがな!
「アアァァァァァ!」
 女がイク時みたいな声を出して、ソイツは痙攣する。
 半分に割れた口のどこから声を出しているのか。
 さっさとクタバレ。
「アァァアアアァァアハハハハハハ!」
 悲鳴が、笑い声に変わる。
 目の前でぶちまけられた血が、映像を逆回しにするように戻っていく。
 切り裂かれた体もつながる。
 ソイツは、俺たちが飛びかかる前と同じ、全くの無傷で目の前に立っていた。
 異形の唇が、笑みの形にゆがむ。
 くるりと、ヤツが回った。
 分かったのはそこまで。
 オレは瓦礫の上に投げ出されていた。
 切ったはずのバランサーがバカになったのか、起き上がろうとダンゴムシがもがく。
 外れた腕、ボロボロになった体を無理矢理にうごかされ、激痛が走り、オレは叫び声を上げた。
 その動きも、だんだんと弱くなり、ダンゴムシは沈黙。
 次にやってきたのは、自分の体が上げる悲鳴。
 ウエットな機体の中からあふれてくるのは、オレの血か、機体のオイルか。
 もしくはそれのどちらもか。
 だんだんと痛みが遠くなる。
 オレは死ぬんだろうか?
 死ぬんだろうな。
 ひどく安らかで澄んだ気持ちで、オレは夕日に赤く染められた、霧ににじむヘルサレムズ・ロットを見つめる。
 きれいだ。
 こんなにこの町がきれいだとは知らなかった。
 この街を、守れなかったことだけが、心残りだ。



 キキッ!
 聞こえにくくなった耳に、車のブレーキ音が聞こえた。
 こんな瓦礫の中を、走れるような車も、運転できるようなドライバーもそうはいない。
 タッ!
 軽い足音が響く。
 武装はしていない。
 一般人か?
 なぜ?
 最後の力で首を曲げる。
 沈んだ太陽が残した、一筋の赤い光の中に、男の背中が見えた。
 夕日より鮮やかな赤毛。
 一般より二回りほど大きな体躯。
 駆け寄った小さな少年が何事か叫ぶ。
 ひとつ頷き、男が奔る。
 何の武装もしていないように見える男が、俺たちを吹き飛ばしたヤツに飛びかかる。

 紅い十字架が、ヤツを貫く。

 断末魔の響きが、オレの頬をビリビリとふるわせた。







 
 ……ああ、なんだ。
 ヒーローはいたんだな。
 この街にも。
 オレは、なり損ねたけど。
 いいさ、それで。
 ヒーローたちに、祝福を。



 死にかけのオレの小さな動きを、死にかけのダンゴムシが拾う。


 突き出された手が、空に向けて親指を立てた。

  I'll Be Back

 そんな言葉が頭をよぎる。
 勘弁しろよ。
 やだね。
 もう、ここには帰ってこねぇよ。

 だいたいあの映画、2以降はクソだしな。




 出現した血の十字架に、ビヨンドの生き物は貫かれ断末魔の叫びを上げる。
 悲鳴は空気を切り裂き、遮るもののない瓦礫の街へ響き渡る。
「うひぃ」
 レオナルドは腰を落とし、耳を手の平で押さえる。
 体に響く悲鳴だけで、意識を持って行かれそうになる。
 最後の声が通り過ぎ、消え、クラウスの体から力が抜ける。

「ぎりぎりで間に合ったな」
 スティーブンが悠々と車から降りて、息をつく。
「吸血鬼じゃなかったみたいですけど、怖いのはまたまだいるんすね」
 レオナルドはゴーグルをつけたまま、額の汗をぬぐう。
「ポリ公はまた全滅か」
 背中を丸めて瓦礫に立つザップが、周りに転がるヘルサレムズ・ポリスだった残骸を爪先で蹴る。
「ちったあ、役に立てよ」
「まぁ、ここまで時間を稼いでくれただけでも御の字だろ」

 そんなスティーブンの言葉に、クラウスはそっと胸に手を置き、すっかり暗くなった空を仰き、まぶたを閉じる。
 命を賭してこの街を守ったヘルサレムズ・ポリスたちへの静かなる祈り。
 同じ目的のために――
だが、共に戦うことはない近く遠い盟友たちへの祈り。



「戦士は星になったのだ」








 レオナルドは、クラウスと同じように空を見上げ、そして、呟いた。


「ここからじゃ、なんにも見えませんけどね」
「お前でもか」
 ザップも釣られて空を見上げる。

「いくら神々の義眼でも、無理なもんは無律すよ」






    ヘルサレムズ・ロットの空は今日も霧に覆われ、
      そこには一粒の星さえ確認することもできなかった。







                                 END

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【The Long Afternoon of Warriors】

某所で書いていた血界戦線の二次創作。男臭い! 女の子出てこない! 主人公が名無し!ものすごくやりたい放題書いていますが、たのしけりゃいいんですよ。私が。

まとめwoネタ速neo 2012-05-10 (Thu) 04:47